全店実食調査!『おとなの週末』が自信を持っておすすめするお店をご紹介します。今回は、東京・青梅の豆腐店『とうふ工房 ゆう』です。
※コロナ禍で外食が自粛・縮小されている状況ですが、ぜひ知っておいて欲しい飲食店を、ご紹介しています
いかにこの大豆のよさを引き出すか 面白くて仕方ない
朝6時。前日の夕方から浸漬した大豆をざるに開け、グラインダーに入れるところから豆腐作りが始まる。見せてもらった特選用の大豆は国産の在来種。ブレンドされた青大豆の色合いが印象的で、実に艶やかだ。
ご主人の大久保裕史さんによれば、「吸水具合は大豆の状態や気温、水温などによって毎日変わるので、前日からが勝負」なのだという。濃度を高めるために水を少なめにして擦りつぶされた大豆は、次に釜に移して炊く。
その間、大久保さんは付きっきりで釜に向かい、時折り、釜の蓋を開けながら蒸気の匂いや沸き具合を確認して微調整をする。表情は真剣そのものだ。
大手であれば温度と時間を設定して自動で炊く工程だが、こだわるのにはもちろんわけがある。「炊き具合で甘みの出方や香りが変わってくるんです。数十秒の沸き方で香りが飛んだり。特に青大豆はその幅が狭いので」
母親の実家が豆腐屋だったという大久保さんにとって、豆腐は身近なものだったという。そんな中、高校や大学生時代、周りの友人が「豆腐は味がないから醤油をつけて食べる」と聞いて違和感を抱いた。
“おじいちゃんちの豆腐”は味があったし、今思えばにがりにこだわっていて甘みもあった。「豆腐ってもっといいものなのにな」という思いだ。
そんな大久保さんが選んだのは、要である大豆にこだわるとともに、その特性を活かした甘みと香りを手間を惜しまずに引き出す豆腐作りだ。
「特選よせとうふ」500円、「特選絹ごし」520円
実際、できあがった豆腐をひと口食べたらなんとも甘く、濃い大豆の味わいに「おお!」と驚くに違いない。そもそも、あまりに濃厚な豆乳に天然のにがりを適量打ち、しかも舌触りよくなめらかに固めることひとつとっても、実はかなり難しいという。
そのギリギリを攻めているらしいのだが、「好きですね。面白くて仕方ない」と大久保さん。『ゆう』の豆腐はそんな情熱が爽やかに伝わってくる旨さでもあるのだ。
[住所]東京都青梅市裏宿町570-7
[電話]0428-84-2470
[営業時間]10時〜16時 ※売り切れ次第終了
[休日]日、第4月
[交通]JR青梅線青梅駅から徒歩12分
撮影/鵜澤昭彦、取材/池田一郎
※2022年10月号発売時点の情報です。
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