現実離れした別世界と日常とを隔てる「吉原大門」
その名も、「吉原大門」バス停で途中下車。路線図の、緑色の丸で示した位置ですね、通りをちょっと先へ歩くと「吉原大門」交差点に出ます。この道を左に行くと遊郭「吉原」の入口である大門があった。
吉原では、中に入ると身分の区別が取っ払われた。武士であっても入口で刀を預けなければならず、特権は一切、認められなかった。士農工商の時代には、特異な場所だったわけです。現実離れした別世界と、日常とを隔てるのがこの「大門」だったわけですね。
ここに来たらもう一つ、見ておくべきものがある。それがこれ、「見返り柳」。
かつて吉原で遊んだ客は大門を出て現実に戻った後、この辺りで後ろ髪を引かれる思いで昨夜の楽しい時間を振り返った、という。それで目印の柳にこの名がついたわけですね。実は何代にも亘って植え替えられていて、場所も移ってるというけど、こういうのを残してくれているだけでもいいですよねぇ。昔の雰囲気をほんのちょっとでも辿れるような気分になれて。
昭和2年建築のレトロなビルを“潜って”行くと……
さて「吉原大門」のバス停に戻って先に進みます。再び「草64」系統に乗って、今度は「大関横丁」バス停で下車。これまた変わった名前だけど昔、下野国(現在の栃木県)黒羽藩の大関家の下屋敷があったことに由来してるんですって。お相撲さんが住んでいたわけじゃないんですね(笑)
ここで降りたのは都電荒川線の終点「三ノ輪橋」に行くのに最寄りだったから。これまで行き当たりばったりで店を探すことも多かったけど、今回は最初から目的地があったんです。一応、最終回ですからね。行ってみたけど外れだった、なんて展開は困るんで。
「三ノ輪橋」電停に行くにはバス停から明治通りを渡って真っ直ぐ突っ切ればいいんだけど、ちょっと遠回りしてみる。日光街道の方から停車場を目指します。
すると入口にあるのが、これ。旧王電ビルです。都電の前身である王子電気軌道の本社ビルだったもので、建てられたのは昭和2年ですって。ビルの中を潜って行く、この通路がいい感じを出してるでしょう?
で、小さな店舗の並ぶ通路を抜けると、三ノ輪橋の電停があります。いかにも終着地、というこの風情がまたたまらない。
ここで右手を見ると、こうなります。「ジョイフル三の輪商店街」。
実はこの商店街、一本道ではなくクロスしていて、交差点まで行って左手を見ると、こんな風にアーケードが長~く伸びている。
「古きよき商店街」って言葉そのものですよねぇ。地元住民の暮らしを支える店が並んでる。だからこそ通行人は引っ切りなしで、彼らの姿を避けて写真を撮るなんてムリでした。