クッキングパパに描かれたコツは「温度管理」と「時間調整」
作中の納豆づくりでは市販の納豆パックを使うことで、手軽にチャレンジできます。ただ、作る過程で適正な温度管理や時間調整といった細心の注意を払うべきポイントがいくつか解説されていますので、それらをきちんと押さえればきっと格別な味に仕上がることでしょう。
ところで、この男性社員が納豆づくりを「(納豆を)飼ってる」として、自宅で発酵中の納豆にたびたび話かけているのが印象的です。そう、納豆菌は生きているのです。
ペットを飼うように家族の一員として、大切に愛情をかけて育むことこそ、特に発酵食品づくりでは、重要です。パンや酒づくりでも、発酵が活発になるように、タネの発酵を行っている室内でクラシック音楽をかけて(聞かせて)いるところがあるようです。
納豆は“飲む”もの!? 千利休や松尾芭蕉も愛飲した「納豆汁」
最後に納豆をアレンジした“荒岩流”「納豆ティー」もぜひ、作ってみましょう。
「納豆を飲む!?」と言うと、驚くかもしれませんが、昔の日本人は、いまのようにご飯に納豆をかけたりしないで、「納豆汁」にして食べるのが一般的だったようです。納豆汁とは、切り刻んだり、すり鉢ですりつぶした納豆を豆腐や野菜とともにみそ汁にしたもので、俳句では冬の季語にもなっています。ちなみに納豆菌は100℃で加熱しても死滅しないので、栄養価の面でもご心配なく。
「全国納豆協同組合連合会納豆PRセンター」のホームページによると、戦国時代、千利休が茶会の席で納豆汁をふるまい、豊臣秀吉らをもてなした記述があります。
また、松尾芭蕉は「納豆きる音しばしまて鉢叩」(1690年)の句を残しています。師走の夜、まな板で納豆を叩いて納豆汁を作っている手をしばし休めて、鉢叩き(念仏僧)が鉢を叩きながら街中を物乞いして歩く音に耳を傾けてごらんなさい、と詠っています。納豆汁が体だけでなく、心もじんわり温めてくれる一句ですね。
大豆という小さな豆が持つ無限の可能性、それを引き出す発酵のチカラを、納豆づくりにチャレンジして自分の手で確かめてみませんか。
※現在は当時の状況と異なる場合があります。
◆『クッキングパパ』とは?
福岡市博多を舞台に、商社の営業課に所属するサラリーマン、荒岩一味が家族や同僚、友人らに得意な料理の腕前を披露、食を通じて周囲の人々に笑顔とパワーを与える物語。作中ある料理のレシピは、定番料理からオリジナルメニュー、地元九州の郷土料理まで多岐にわたり、詳細なイラストとポイントを押さえた簡潔な説明はいま、すぐ作りたくなると好評を博している。
週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で1985年から連載している人気シリーズで、2022年4月現在、単行本は162巻。
※「おとなの週末Web」の記事では本稿紹介の漫画、クッキングパパ 「COOK.157華麗なる納豆野郎」を一話丸ごと読むことができます。