お彼岸におはぎをお供えするのはなぜ?夏と冬にもあった!おはぎの呼び名 一年のうち昼と夜の長さが等しくなる日は2回あります。それが「春分の日」と「秋分の日」です。仏教では、先祖のいる世界を「彼岸(ひがん)」、私たちが生きて…
画像ギャラリー「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「おはぎ」です。
文:三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治
秋の彼岸には「おはぎ」を供える
秋分の日の行事食は「おはぎ」。秋分の日を中日(ちゅうにち)とする前後3日間(合計7日間)が秋の彼岸で、おはぎがお供えされます。このおはぎにはいくつかの別名がありますが、次のうちおはぎの別名にあてはまらないのはどれでしょうか?
(1)ぼたもち
(2)あんころ餅(もち)
(3)北窓(きたまど)
お米の粒が半分残る程度につぶす
答えは(2)の「あんころ餅」です。
「おはぎ」や「ぼたもち」は、もち米やうるち米を炊いた後に、粒が半分残る程度につぶして丸め、粒あんやこしあんで包んだものです。
「あんころ餅」は、見た目は似ていますが、中身は完全な餅であるため、おはぎやぼたもちとは区別されます。
「おはぎ」と「ぼたもち」はとても良く似ていますが、その違いについて疑問に感じたことはありませんか?結論から言うと、食べ物としては両者は同じものと考えて差し支えありません。名前の由来は、ぼたもちは「牡丹餅」、おはぎは「お萩餅」から来ており、牡丹の花は春、萩の花は秋に咲くことから、「春のぼたもち」「秋のおはぎ」と言われます。
あんの種類や形状は、若干区別されることもあります。小豆(あずき)は秋に収穫されるため、おはぎには柔らかい小豆でできた粒あんを使い、春は小豆の皮がかたくなり食べづらいため、ぼたもちにはこしあんを使うことがあります。
しかし、品種改良や保存技術の発達で、現代ではその差異も薄れつつあります。また、ぼたもちは牡丹の花をかたどって丸く大きめに作り、おはぎは萩の花をかたどってやや細めで小ぶりに作られることもあります。
北窓は、おはぎの異称です。
お彼岸におはぎをお供えするのはなぜ?夏と冬にもあった!おはぎの呼び名
一年のうち昼と夜の長さが等しくなる日は2回あります。それが「春分の日」と「秋分の日」です。仏教では、先祖のいる世界を「彼岸(ひがん)」、私たちが生きている世界を「此岸(しがん)」と言います。春分・秋分の日には昼と夜の長さが等しくなることから、彼岸と此岸の距離がもっとも近づく日とされ、先祖供養などを行う習わしができました。
春の彼岸には「ぼたもち」を、秋の彼岸には「おはぎ」をお供えします。小豆の赤色には邪気や災厄をはらい、ご先祖様を供養する力があると考えられてきたためです。
「おはぎ」と「ぼたもち」ほど一般的ではありませんが、夏と冬に対応する呼び名もあることをご存じでしょうか。おはぎには四季に応じてつぎのような呼び名が充てられています。
春の「ぼたもち」
夏の「夜船」(よふね)
秋の「おはぎ」
冬の「北窓」(きたまど)
おはぎはもち米を使いますが、餅のように杵(きね)で搗(つ)くことはしません。そのため、いつおはぎを作ったのか近所の人は分からないというところから、
搗き知らず→着き知らず→夜船(夜はいつ船が着いたか分からない)
搗き知らず→月知らず→北窓(北側の窓は月の光が入らない)
と呼ばれるようになったという説が有力です。
(参考)
[1] ぼた餅(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2003/spe2_01.html
[2] 季節と餅(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2001/spe2_01.html#ph03
[3] 農菓プロジェクト(北陸農政局)
https://www.maff.go.jp/hokuriku/food/washoku/torikumi/ishikawa2.html