「食」のクイズ

腸活の注目物質「短鎖脂肪酸」とは「食」の三択コラム

短鎖脂肪酸の働き 短鎖脂肪酸でないのは、(1)の「乳酸」です。 乳酸は、激しい運動をした後に蓄積することから、以前は疲労物質とも呼ばれていました。しかし最近では、筋肉のpHバランスが酸性に傾くことが疲労の一因と考えられて…

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「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「短鎖脂肪酸」です。

文:三井能力開発研究所・圓岡太治

多岐にわたる研究テーマ

最近話題となっている短鎖脂肪酸。健康維持に重要な役割を果たしていることが明らかになり、関連する研究論文が急増しています。その研究テーマは、肥満、脳機能、免疫、アレルギー、心血管疾患、糖尿病など多岐にわたります。

短鎖脂肪酸は、ヒトの大腸内でビフィズス菌などの菌が水溶性食物繊維などをエサにして作り出す酸(有機酸)の一種です。脂肪酸は炭素がいくつか鎖状に連なる構造を持っていますが、炭素数が6以下のものを短鎖脂肪酸と言います。特に健康にとって重要なのは、「酢酸」「プロピオン酸」「酪酸」の3種とされています。
さて、次のうち、短鎖脂肪酸でないものはどれでしょうか。

(1)乳酸
(2)酢酸
(3)酪酸

短鎖脂肪酸の働き

短鎖脂肪酸でないのは、(1)の「乳酸」です。

乳酸は、激しい運動をした後に蓄積することから、以前は疲労物質とも呼ばれていました。しかし最近では、筋肉のpHバランスが酸性に傾くことが疲労の一因と考えられています。血液中の乳酸は、肝臓でグリコーゲンに再合成され、再びエネルギー源として利用されます(参考[1])。

乳酸はおもに小腸で乳酸菌により産生されます。大腸でもビフィズス菌などにより産生され、腸内を弱酸性に保ち腸内環境を整えるのに寄与しています。

短鎖脂肪酸は、ヒトの大腸内でビフィズス菌などの菌が水溶性食物繊維などをエサにして作りだす酸(有機酸)の一種です。脂肪酸は炭素がいくつか鎖状に連なる構造をもっていますが、炭素数が6以下のものを短鎖脂肪酸といいます。特に健康にとって重要なのは、「酢酸」「プロピオン酸」「酪酸」の3種とされています。

短鎖脂肪酸のはたらきは多岐にわたっていて、以下のようなおもなはたらきのほか、整腸作用や生活習慣病予防、水やミネラル(Na・Ca・Mg)の吸収促進など、多くの機能を持っていることが分かってきました。また、短鎖脂肪酸はエネルギー源ともなります。酪酸は大腸上皮細胞のエネルギーとして、酢酸とプロピオン酸は肝臓や筋肉で代謝に活用されます。

・食欲を抑制する
腸管の表面には、腸管内分泌細胞という栄養素を認識して消化管ホルモンを分泌する細胞があります。短鎖脂肪酸が腸管内細胞の受容体と結びつくことで、食欲を抑制するホルモンが分泌されます。

・便秘を解消
短鎖脂肪酸が増えると腸内が酸性になり、大腸の粘膜を刺激してぜん動運動が活発になります。また、短鎖脂肪酸は腸管内に電解質と水分が放出されるのを促し、便の水分量を増やします。これらの効果で便通が改善されると考えられています。

・悪玉菌を抑える殺菌、静菌作用
短鎖脂肪酸は腸内を適度な酸性に保ち、悪玉菌の活動を抑えます。特に酢酸には、悪玉菌を退治する殺菌作用や、増殖を抑える静菌作用があることが知られています。

・免疫力を高める
腸には多くの免疫細胞が集まっており、免疫システムの約70%は腸にあるとも言われています。短鎖脂肪酸の中でも、酪酸やプロピオン酸には、元気な腸粘膜を維持してウイルスや病原菌から体を守る「腸管バリア機能」を高める働きがあります。

腸内環境を整えます

短鎖脂肪酸を摂取するには

健康にとって重要な働きをする短鎖脂肪酸ですが、直接食品から摂取するのには問題があります。それは、酢酸(お酢)で分かるように、味やにおいが強く、飲食物から十分な量を摂取するのが難しいことです。また、短鎖脂肪酸は大腸内でさまざまな有益な働きをしますが、口から摂取しても、小腸でほとんどが吸収されてしまい、大腸まで届きにくいという問題もあります。

そのため短鎖脂肪酸は体外から摂り入れるよりも、腸内細菌に作ってもらうことを考える方が良いのです。もっとも有効なのは、腸内細菌のエサとなる水溶性食物繊維やオリゴ糖などを摂取することです。水溶性食物繊維を多く含むのは、きのこ類や野菜類です。特にきくらげ、かんぴょう、干し大根などの乾物は、水溶性食物繊維が豊富です。

腸内細菌に作ってもらうのが理想です

(参考)
[1] 乳酸(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-045.html
[2] 脂肪酸受容体GPR41によるエネルギー調節機構の解明(京都大学)
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/archive/prev/news_data/h/h1/news6/2011/110426_1

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