熱々の餡掛けスープがたまらない!サンマーメンに土地ごとの味
まぁグチってもしょうがない。実はここに来る途上、これはと思う店を見つけてはいたんですよ。競輪場の前の道を、川崎駅方向へ向かう位置にちらりと見えた、よさげな町中華。“オケラ街道”がないんだったら、もうあそこしかない!
というわけで戻りました。
町中にすっかり馴染んだこの店構え。目を惹かれたのも分かるでしょう?
中に入るとしっとりと落ち着いた店内で、メニューも豊富だったけど私の腹はもうほぼ決まってた。神奈川県で町中華。「横浜編」の締めとして、“県民のソウルフード”サンマーメンを食べたけど、今度は「川崎編」の始まりとして同じ料理でスタート、というのはアリでしょう?
頼んでみると、出て来たのはこれでした。モヤシたっぷりの餡に豚バラ、キクラゲ、玉ねぎ、ニラ、ニンジンと具も豊か。これで700円は泣かせますよねぇ。横浜の時よりスープが若干、醤油の香りが前面に出てるように感じた。一口にサンマーメン、とは言っても土地ごと、店ごとに特徴があるんですよ。そうでなきゃ食べ歩きが面白くならない。
熱々の餡掛けスープにメガネが曇り、ハフハフ言いながら細麺を啜る。あぁ、美味い。幸せぇ……。今回は敷地の広い施設の周りばかり巡ったから、すっかり足が棒になってる。その疲れを、温かく解してくれる味わいでした。
おまけにここ、15時まではコーヒーがタダのサービスも。有難く食後のコーヒーも堪能しましたよ。
奥のテーブル席で、いかにも地元住人らしいオバチャン2人連れが、ずーっと喋ってる。確かに昼食を摂ってのんびり過ごすには、この上ない店だよね、と同感。
川崎球場のあった町には今も、地元の温かみが残されたままでした。
西村健
にしむら・けん。1965年、福岡県福岡市生まれ。6歳から同県大牟田市で育つ。東京大学工学部卒。労働省(現・厚生労働省)に勤務後、フリーライターに。96年に『ビンゴ』で作家デビュー。2021年で作家生活25周年を迎えた。05年『劫火』、10年『残火』で日本冒険小説協会大賞。11年、地元の炭鉱の町・大牟田を舞台にした『地の底のヤマ』で日本冒険小説協会大賞を受賞し、12年には同作で吉川英治文学新人賞。14年には『ヤマの疾風』で大藪春彦賞に輝いた。他の著書に『光陰の刃』『バスを待つ男』『バスへ誘う男』『目撃』、雑誌記者として奔走した自身の経験が生んだ渾身の力作長編『激震』(講談社)など。2023年1月下旬、人気シリーズ最新作『バスに集う人々』(実業之日本社)を刊行。