画期的な開発手法を導入
トヨタはbBを開発するにあたり当時としては画期的な手法を導入。バーチャル・リアリティと呼ばれるもので、試作車を作らずCGなどを駆使してフルデジタル設計することによって開発時間、開発コストは大幅に削減された。
当時の技術でこれが可能となったのは、プラットフォームを共用する同じハイトワゴンのファンカーゴがあったからだという。初代bBの開発手法は、その後のトヨタの開発において大きな意味を持っていた。
初代bBを手掛けたのは多田哲也氏
バーチャル・リアリティという方法で開発が進められた初代bBの開発責任者は多田哲哉氏だ。多田氏は三菱自動車に入社しエンジニアとして活躍した後に独立。そして1987年にトヨタに入社、こよなく走ることを愛し、ラリー好きなカーガイだ。
多田氏は2013年に登場した86の開発責任者で有名になり、いろいろなメディアにも登場。当然自動車雑誌『ベストカー』でもおなじみだ。
BMWと共同開発したGRスープラも多田氏が手掛けたこともあり、根っからのスポーツ畑のように感じるが、多田氏がトヨタ入社後に初めて開発責任者になったのが初代bB(2000~2005年)で、そのほかには2代目ラウム(2003~2011年)、初代パッソ(2004~2010年)、ファンカーゴの後継のラクティス(2005~2010年)といった実用車を手掛けている。
後述するが、多田氏が手掛けた初代bBと86を手掛けているというのが因縁めいている。
車名の由来はブラックボックス
初代bBは若者向けに仕立てられていて、前述のとおり特に20代をターゲットとしていた。そのためそれまでのトヨタ車にはないいろいろな要素が盛り込まれている。
まず車名について。bBというのはBLACK BOX(ブラックボックス)の略語とされている。ブラックボックスは、中身のわからない不気味なもの、と言う意味があるが産業界では内部機構が見えないように密閉された機械装置を意味している。それをトヨタポジティブに、『未知の可能性を秘めた箱』という意味で命名。車名のロゴもこだわっていた。
大文字と小文字をミックスしているのは諸説あるが、騒音レベル、音楽などで使われるdB(デシベル)に由来しているという説もある。ビービーという車名は言いやすく、耳ざわりもいいため、ブランニューモデルながらあっという間に浸透した。
アラカンの筆者世代からすればビービーと言えば、フェラーリ512BBだった。オモシロいのは、筆者よりももっと上の世代(現在75歳前後)は、BBといえばブリジッド・バルドーだったようで、それゆえbBのことを彼女の愛称のべべと呼んでいる人もいた。