こんなことある? というほど酷評
ミドシップスポーツの真骨頂と言えばコーナリングパフォーマンスにある。重量物であるエンジンが車体のセンター近くに配置されるため回頭性のよさによりキビキビとしたハンドリングを実現できる。しかし限界時の挙動がシビアになるというネガも併せ持つ。初代でもその点は指摘されていたため、トヨタは大きく改善していることに期待がかかっていたが……。ひとクラス上のミドシップスポーツカーとして生まれ変わった2代目MR2だったが、デビュー時の走りの評価は散々だった。
要約すれば、「普通に走っているぶんにはいいが、攻め込むと危険」というもの。これが大勢の評論家のなかで数名が言っているのならまだしも、ほぼ乗った評論家全員の評価だったから大変。
2代目MR2は危険なクルマ!?
前述のとおり多かれ少なかれミドシップスポーツは危険性を持ち合わせているのだが、デビュー時の試乗インプレッションにより、『2代目MR2は危険なクルマ』というレッテルが貼られてしまった。当時はクルマの情報を得るのはクルマ雑誌しかない時代、筆者も2代目MR2は危ないクルマなんだと即座に思った。
ただ誰もがサーキットを走ったり、峠道を攻め込んで走るわけではない。評論家も言っていたように、普通に乗れば何の問題もないクルマだった。日本車で危険なクルマというレッテルを貼られたものにマツダオートザムAZ-1もあるが、2代目MR2で事故が多発したということはまったくなかった。この点は強調しておきたい。
限界時の挙動がシビア
2代目MR2の走りが危険だと指摘された要因はどこにあったのか? いろいろな評論家のレポートを改めて見てみると共通しているのが前後ストラット式のサスペンションの煮詰め不足にあるようだった。
サスペンションのアライメント変化が大きく、限界時の接地性が急激に変化する。これにより一気にリアがブレークしてスピン状態になってしまう。その際に対処できる運転技量があればいいが、そうでないドライバーにとっては危険、ということだったようなのだ。
あとはブレーキ。2代目MR2の純正タイヤサイズはフロントが195/60R14、リアが205/60R14というもの。ボディが大型化したにもかかわらず14インチでは明らかにブレーキ容量が足りてなくてストッピングパワーがプアだったのも走りの評価を大きく落とす要因となっていたようだ。
筆者は最初期の2代目MR2に乗ったことがあるが、当然限界時まで攻めるだけの技量もなければ根性もない。自分で攻めたつもりでも何も起こらなかった。つまりそれはクルマの限界まで性能を引き出せていないということ。普通の人はこんなもんでしょう。『自動車評論家はクルマに乗って好き放題言っているだけの気楽な稼業』、と思っていたが、2代目MR2に乗ってみて、特に走りの評価を得意とする自動車評論家は凄いポテンシャルを持っているのだとリスペクトするようになった。