市販されなかった和製スーパーカー 童夢-零は日本のクルマ史に名を刻む幻の一台
今でこそ世界で確固たる地位を築いている日本車だが、暗黒のオイルショックで牙を抜かれた1970年代、それを克服し高性能化が顕著になりイケイケ状態だった1980年代、バブル崩壊により1989年を頂点に凋落の兆しを見せた1990年代など波乱万丈の変遷をたどった。高性能や豪華さで魅了したクルマ、デザインで賛否分かれたクルマ、時代を先取りして成功したクルマ、逆にそれが仇となったクルマなどなどいろいろ。本連載は昭和40年代に生まれたオジサンによる日本車回顧録。連載第56回目に取り上げるのはトヨタが2000年に登場させたWiLL Viだ。
1990年代はいろいろなブームが日本を席巻
1990年代のクルマ界と言えば、2代目三菱パジェロの登場が決定打となった『クロカンブーム』に始まり、初代&2代目スバルレガシィツーリングワゴンで盛り上がりを見せた『ワゴンブーム』、さらには初代ホンダオデッセイの大人気で勃発した『乗用ミニバンブーム』など、いろんなブームで盛り上がりを見せていた。
バブル崩壊により、個人よりも家族、クルマで何かを楽しむ、クルマは楽しむための手段のひとつと考える人が増えた結果、クルマは動力性能よりも多様性が求められるようになった。
初代ハリアーの登場でSUVブームの兆し
前述のブームでいえばSUVブーム。世界的な高級SUVブームは2000年デビューのBMW X5が契機となったと言われるが、日本では1997年に登場したトヨタの初代ハリアーの人気によりSUV人気が高くなり、日本でのSUVブームが訪れることになる。そのSUVブームは現在も続いていて、クルマ界のブームとしては異例なほど長い。一般的にブームと呼ばれるものは一気に盛り上がって、突然収束する一過性のもの。だから現在はSUVはブームではなく、クルマの主流がSUVになったということだ。
セダンの凋落
今回取り上げるWiLL Viがデビューしたのは2000年1月。間もなく訪れようとしている新時代を前に期待と不安が入り混じっていた。今思えば、必要以上に騒いでいただけのような気もするが……。
クルマ界では大きな異変が起こっていた。まずひとつ目がセダンの凋落が顕著になったことだ。1980年代まではセダンが主流だったが、いろいろなブームに押されてセダンが深刻なレベルで売れなくなっていた。その対策としてトヨタは、『セダンイノベーション』を掲げ新たなセダン像を模索する一方で、セダン的な使い方ができる新たなジャンルのクルマの開発に必死になっていた。ナディア、オーパなどはそれによって誕生。