新横浜ラーメン博物館・あの銘店をもう一度

新ご当地ラーメン創生計画で生まれた青森『八戸麺道大陸』【新横浜ラーメン博物館・あの銘店をもう一度】第9弾

八戸支那そば(2002年撮影)

2002年3月6日、グランドオープン 2002年3月6日、新横浜ラーメン博物館8周年記念日に、八戸麺道大陸がついにオープンを迎えました。この日は、密着しているテレビ東京「日曜ビックスペシャル」の撮影で、板東英二さんも駆け…

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新横浜ラーメン博物館(横浜市)は、30周年を迎える2024年へ向けた取り組みとして、過去に出店した約40店舗が2年間かけて3週間のリレー形式で出店するプロジェクト「あの銘店をもう一度」を2022年7月1日から始めています。このプロジェクトにあわせ、店舗を紹介する記事の連載も同時に進行中。新横浜ラーメン博物館の協力を得て、「おとなの週末Web」でも掲載します。

第9弾は、青森「八戸麺道大陸」です。

ラー博で修業後、現地に戻り出店

第9弾は、新ご当地ラーメン創生計画第2弾で誕生した「八戸麺道大陸」です!

日本各地にはそれぞれ個性的な「ご当地ラーメン」がありますが、地域によっては明確なラーメンスタイルが無い場合もあります。そのような地域の食文化や特産品を活かした、新たなラーメンの提案、それが「新ご当地ラーメン創生計画」です。

このプロジェクトは、エリアとプロデューサーを決め、そのエリアに在住・在勤している人を対象に出店事業主を募集し、審査・面接後に出店事業主を決定。2ヶ月の修業を経て、1年間ラー博で運営して資金を貯め、必ず現地に戻って店を開業するということが条件となります。

「八戸麺道大陸」は「新ご当地ラーメン創生計画 第2弾 八戸編」で出店したお店です。対象エリアは青森県八戸市。プロデューサーは「支那そばや」の佐野実氏を迎え入れました。

・過去の過去ラー博出店期間
2002年3月6日~2003年2月23日

岩岡洋志・新横浜ラーメン博物館館長のコメント

「当館の企画で行った『新ご当地ラーメン創生計画』で誕生しました。プロデューサーの佐野実氏が一番脂ののっていた時期でしたので、全ての知識や技術が詰まったラーメンで、20年経った今でも、かなり先を行っているラーメンだと感じました」

新ご当地ラーメン創生計画第1弾は、琉球新麺「通堂」

因みに第1弾は沖縄が対象エリアで、プロデューサーは「一風堂」の河原成美氏。そのお店は現在ラー博に出店している琉球新麺「通堂」です。

「新ご当地ラーメン創生計画」第1弾は沖縄の琉球新麺「通堂」

「知られざる食材の宝庫」青森・八戸

第2弾の対象地「八戸」は、古くから漁港として栄え、2002年12月1日に東北新幹線の延伸(盛岡→八戸)が予定されていた東北北部の経済拠点。

漁港を背景とした新鮮な海産物をはじめ、周辺の旧南部藩地域には鶏、豚、各種野菜等、全国的に見ても良質な農作物が豊富な「知られざる食材の宝庫」で、プロデューサーの佐野実氏もこの食材大陸に惚れこみました。

食材の調査、出店者の選定

対象地を発表する前に、プロデューサーの佐野実氏を中心に八戸及び周辺の食材調査から始まりました。食材調査のみならず、地元の郷土料理や、地元のラーメンの食べ歩き等、帰郷後の出店を踏まえて地元に根付く食文化の調査を行い、佐野実氏の頭の中で、大まかな構想が完成。2001年9月27日に出店事業主募集を始めました。

約50名弱の応募者の中から出店事業主に選ばれたのは、昭和32年創業の老舗中国料理店「大陸飯店」の箭内一三総料理長(当時の肩書)。

大陸飯店(2002年撮影)

箭内氏は総料理長として腕を振るう傍ら、地元調理学校の講師を務める、青森県内では有数の中国料理職人でした。

因みに選考会から出店までを、テレビ東京「日曜ビックスペシャル」にて密着放送されました。(放送日は2002年3月17日19:00~20:54)

最終選考会の模様=東京誠心調理師専門学校(2002年撮影)

ゴミ捨てから始まった修業

箭内さんが修業に入ったのは2002年1月15日。当時20人弱の弟子を持つ箭内さんの修業はゴミ捨て、下処理から始まりました。大陸飯店では総料理長でしたが、ここでは一介の弟子。それでも箭内さんは初心にもどり一から学びました。

下処理をする箭内さん(2002年撮影)

2月に入ると、ようやく佐野氏とラーメンの試作に取り組みました。箭内さんは佐野さんのレシピ通り作るも理想通りの味に辿り着けません。問題は火加減でした。期間は長いようで短く、なんとしてでも佐野さんのスープ作りを体で覚えなければいけない中、試行錯誤を繰り返し、スープ作りに励みました。

自分の意見を挟む余地のない箭内さんでしたが、少しずつ自分なりの姿勢をみせ始め、味に付いて意見をするようになり、お互いもてる力を振り絞って最高の味を目指しました。ラーメン作りも佳境に入り、最終段階で「もう一味」についてお互い悩み、箭内さんは八戸に食材を探しに一度戻り、佐野さんはタレに一工夫加えました。そして2月14日、ついにお互い納得の行く味が完成しました。

修業当時の佐野さんと箭内さん(2002年撮影)

2002年2月20日、地元八戸でのお披露目

2002年2月20日、ラー博オープン前に、八戸でラーメンのお披露目会を行いました。八戸ラーメンに関して、地元の関心度は高く、地元のマスコミ、後援である八戸商工会議所・新幹線八戸駅開業事業実行委員会・八戸観光協会・八戸市物産協会、大陸飯店の関係者等150人に及ぶ参加者が集まりました。

八戸現地試食会=大陸飯店(2002年撮影)

参加者の目は「麺」に集まりました。八戸では縮れた細麺が主流でしたが佐野さんは、八戸の郷土料理である「ひっつみ」からヒントを得て「無意識のうちに八戸市民が慣れ親しんでいる食感を表現するには太麺が適する」と感じたようです。

小麦粉は、二戸産国産小麦「南部小麦」、「ねばりごし」を使用。小麦に旨み・香りがあり、モチモチした食感で手間暇かけて手揉みした麺。スープに関しても、「今まで味わった事のないコク」「適度の脂感がよい」との意見があり、ほとんどのお客様がラーメンを完食し、地元でのお披露目会は成功に終わりました。

2002年3月6日、グランドオープン

2002年3月6日、新横浜ラーメン博物館8周年記念日に、八戸麺道大陸がついにオープンを迎えました。この日は、密着しているテレビ東京「日曜ビックスペシャル」の撮影で、板東英二さんも駆けつけてくれました。

オープン前から大陸を目的に来られるお客様が続々と訪れ、オープンと同時に大勢のお客さんが大陸を目指し、あっという間に長蛇の列に。

2002年3月6日、オープン当日の様子

これを見たプロデューサーの佐野実さん、店主の箭内一三さんもホッとした表情を見せました。お昼になると、その行列は60分待ち。夜になっても行列は途切れず、結局この日は一度も行列が途切れないまま閉店を迎えました。

お客さんも「癖になる味」、「懐かしいけど新しい味」、「シンプルだけど奥深い味」など、上々の評判でした。

1Fギャラリーでは、八戸麺道大陸についての展示スペースを設けて休憩しながら八戸の歴史や今回使われる食材について学ぶことができ、大陸の全てがわかる紹介ビデオを放映していました。

ラー博出店時の箭内さん(2003年撮影)

屋号「八戸麺道大陸」について

店名「八戸麺道大陸」(はちのへめんどうたいりく)は、「八戸の地で新しいラーメン文化を切り開いて行く」、そんな思いから名付けられました。

「八戸麺道大陸」のロゴ

まだまだ食生活も豊かではなかった昭和32年、大陸飯店創業者の故・豊田行光さんは、本場中国大陸の本格的な料理を食べてもらいたい一心から、八戸で最初の中国料理店「大陸飯店」を創業しました。そのフロンティアスピリットをラーメンという新境地で新たな文化を切り開いていくという想いが込められております。

「北国の郷愁と手作り感」ラーメンの基本コンセプト

ラーメンの基本コンセプトは「いつかどこかで食べた懐かしさ。朴訥とした北国の郷愁と手作り感」でした。

ラーメンを創作するにあたり、最初に着手したのは麺。ヒントを得たのは日常的に親しまれてきた八戸の郷土料理「ひっつみ」。

八戸のラーメンは縮れた細麺が主流でしたが佐野さんは「無意識のうちに八戸市民が慣れ親しんでいる食感を表現するには太麺が良い」と考えました。手間はかかりますが1玉1玉手もみをすることによって「ひっつみ」特有のモチモチとした食感と舌触りを表現。小麦粉は岩手県二戸産の「南部小麦」と「ねばりごし」を使用し、小麦の旨味も生きた存在感のある麺に仕上がりました。

スープの決め手となる食材は宮内庁御用達の六戸産地鶏「シャモロック」。シャモとプリマスロックを掛け合わせたシャモロックは両親の良い部分だけを引き継いだ濃厚な味わいを持ちます。豚は青森十和田産の銘柄豚「ガーリックポーク」のゲンコツ、ロースを使用。隠し味に芳醇な甘みとまろやかさが出る小川原湖産のモクズガニをはじめ、焼き干し、干しイカ、干し貝柱等南部地方の食材を中心とした構成です。

宮内庁御用達の六戸産地鶏「シャモロック」
小川原湖産のモクズガニ・しじみ、干しイカ

タレはテーマである「懐かしさ・郷愁」を表現するうえで重要なポイントで、醤油の風味で懐かしさを演出しました。ベースとなる醤油は岩手県陸前高田産の2年もろみ熟成醤油を使用。もろみの風味を最大限に活かすため、火入れをしない生醤油を取り寄せ、自ら火入れを行いました。もうひとつのポイントは小川原湖産のしじみから抽出したエキス。貝自体の旨味がインパクトの強い醤油に丸みと深みが加わります。

岩手県陸前高田市「 八木澤商店」の2年もろみ熟成醤油

チャーシューには収穫量日本一のニンニクを餌として食べさせる十和田産「ガーリックポーク」を使用。食感の違いを楽しんでもらえるようモモ肉と肩ロースを1枚ずつ配置。メンマは麺の食感との一体感を考え、短冊状のものを使用。彩に緑鮮やかな小松菜とねぎを加えました。

八戸支那そば(2002年撮影)

約20年ぶりにラー博に復活

「八戸麺道大陸」は2003年に八戸で帰郷オープンし、2009年4月30日、惜しまれながら閉店しました。

現在、箭内さんは佐野実さんの命を受け、2014年2月より支那そばやの総料理長に就任。その2ヶ月後に佐野氏は逝去されました。

そのため、今回の「八戸麺道大陸」は閉店しているため幻のお店の復活となります。お店自体が復活するのが13年ぶり、ラー博に復活するのは約20年ぶりです。

あの銘店をもう一度・第9弾・「八戸麺道大陸」

出店期間:2022年12月16日(金)~2023年1月9日(月)
     ※2022年12月31日(土)~2023年1月1日(日)は休館日
出店場所:横浜市港北区新横浜2-14-21 
     新横浜ラーメン博物館地下1階
     ※第7弾「名人の味 爐」の場所
営業時間:新横浜ラーメン博物館の営業に準じる。

『新横浜ラーメン博物館』の情報

住所:横浜市港北区新横浜2-14-21
交通:JR東海道新幹線・JR横浜線の新横浜駅から徒歩5分、横浜市営地下鉄の新横浜駅8番出口から徒歩1分
営業時間:平日11時~21時、土日祝10時半~21時
休館日:年末年始(12月31日、1月1日)
入場料:当日入場券大人380円、小・中・高校生・シニア(60歳以上)100円、小学生未満は無料
※障害者手帳をお持ちの方と、同数の付き添いの方は無料
入場フリーパス「6ヶ月パス」500円、「年間パス」800円

※協力:新横浜ラーメン博物館
https://www.raumen.co.jp/

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