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事件の「黒幕」は誰なのか

昔から釣天井事件の黒幕は加納御前ではないかという説があります。彼女の娘は初代小田原藩主であり、大久保彦左衛門の甥にあたる大久保忠隣(ただちか)の息子に嫁いだのですが、大久保忠隣は大久保長安事件に連座して失脚しています。実はこれは政敵だった本多正信、正純親子の仕組んだものと信じられており、加納御前は正純のことが大嫌いでした。

正純の前の宇都宮城主が、加納御前の息子・家昌だったことはすでにお話ししました。この家昌の急死により、孫にあたる忠昌が継いだのですが、正純が宇都宮藩主になったことで、忠昌は古河藩11万石に押し出されるかたちになり、加納御前の正純への恨みは大きかったと想像されます。ちょうど弟の秀忠や秀忠の側近たちも、正純を疎ましく思っていたこともあって思惑が一致し、「釣天井事件」がでっち上げられたのではないでしょうか。

宇都宮城 mtaira@Adobe Stock

【宇都宮城】(別名・亀ヶ岡城)
築城は平安時代末期、築城主は平将門討伐で功のあった藤原秀郷、といわれている。平安時代から慶長2(1597)年、豊臣秀吉によって改易されるまで530年にわたって、宇都宮氏の居城となった。江戸時代は譜代大名の居城として、北関東、東北を見据えての拠点となり、歴代将軍が日光東照宮に参拝する際の宿泊所になった。関東7名城のひとつ。

■宇都宮城址公園・清明館
住所:宇都宮市本丸町、旭1丁目
料金:無料
入館時間:9~19時(櫓などの歴史建築物。展示施設は9~17時)
休日:年末年始
電話:028-632-2529(宇都宮市都市整備部公園管理課管理グループ)
駐車場:城址公園駐車場(無料)

【本多正純】
ほんだ・まさずみ。1565~1637年。永禄8(1565)年、徳川家康の重臣、本多正信の嫡男に生まれる。父同様、知謀家で家康に重用される。家康の死後、2代将軍秀忠に仕える。権勢を誇ったが、しだいに秀忠側近の土井利勝らと対立した。宇都宮城釣天井事件で失脚。出羽国横手に配流され死去。秋田県横手市の横手城に墓があり、連座し同じく配流された息子の正勝も同地に眠る。

松平定知さん

松平定知 (まつだいら・さだとも)
1944年、東京都生まれ。元NHK理事待遇アナウンサー。ニュース畑を十五年。そのほか「連想ゲーム」や「その時歴史が動いた」、「シリーズ世界遺産100」など。「NHKスペシャル」はキャスターやナレーションで100本以上担当。近年はTBSの「下町ロケット」のナレーションも。現在京都造形芸術大学教授、國學院大学客員教授。歴史に関する著書多数。徳川家康の異父弟である松平定勝が祖となる松平伊予松山藩久松松平家分家旗本の末裔でもある。

※『一城一話55の物語 戦国の名将、敗将、女たちに学ぶ』(講談社ビーシー/講談社)から転載

※トップ画像は「Webサイト 日本の城写真集」

(「Webサイト 日本の城写真集」より)

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