よそのお酒を飲むことで、発見
「よそのお酒を飲むと、発見も多いですね。この前、『旭菊』の6号酵母を開けて放置しておいたら、瓶熟してさらにおいしくなってました。肴は適当です。ナスを炊いただけ、キュウリを塩揉みしただけ、それに焼き魚とか。日本酒がご飯代わりです」
今も昼ご飯はるみ子さんの手料理を囲む。仕事終わりには一緒に一杯やることも多い。
その晩、食卓にはタコの唐揚げ、サバの塩辛、牡蠣のオイル煮、菊芋の酒粕漬けが並んだ。豊本さんは頃合いを見て、電気ポットとチロリで燗をつける。あうんの呼吸だ。
「タコは私が大好きなんで、るみ子さんがよく芋と炊いたり、唐揚げにしてくれたり。タコみたいに素材の旨みが強いけど味の要素は少ない物と、うちのお酒のぬる燗は相性いいと思います」と豊本さんが言うと、「そやな。うなぎの白焼きなんかもええんちゃうやろか」と英樹さんが引き取る。「白焼きとワサビと粗塩で、それにうちの古酒の燗。あれはテッパンや」とるみ子さんが続ける。
四半世紀もの間、じっくりと熟成された3人の自然な空気感。それが最高のアテになっている。