カラフルなボディカラー
筆者は東洋工業の地元広島出身ということもあり、この4代目ファミリアは嫌というほど街中で目にした。親戚、ご近所さん、学校の先生など、身近な人たちも4代目ファミリアを新車で購入していた。ただ、若い人が乗っていたイメージはあまりなく、家族で使っているクルマという印象が強い。
4代目ファミリアは、標準色は白だが、赤、黄、青のシグナルカラーのほか、黄緑といったカラフルなボディカラーが人気。そんなこともあって街中では目立っていた。
インテリアデザインも秀逸で、四角いパネルを組み合わせたインパネは当時の大衆車とは思えない凝ったデザインに仕上げられている。シートカラーも豊富に用意され、ボディカラーに合わせてチェック柄の敗色が違うなど、マツダのこだわりを感じさせてくれる。
映画で使われた実車は現存
4代目ファミリアと言えば、高倉健さん主演の映画『幸せの黄色いハンカチ』(1977年・松竹・山田洋二監督)だろう。武田鉄矢さん演じる欽也は失恋後に買った「赤いファミリア」が、劇中で物凄くいい味を出している。筆者は映画館ではなく、TV放映された時にこの作品を見た。当時は小学生で免許は持っていなかったため、特別ファミリアに目が行くことはなかったが、「このファミリア欲しい!!」と思った人は絶対多かったはず。
最後のロケ地となった夕張市には、『幸せの黄色いハンカチ 想い出ひろば』(北海道夕張市日吉5-1)があって、一般公開されている。映画で使われた赤いファミリアも展示されている。冬季は閉館のようだが、2024年1月末現在も夕張市のホームページに掲載されているので気になる方はどうぞ。
映画『幸せの黄色いハンカチ』でのエピソード
なぜ赤いファミリアなのか? 気になるところだ。その謎を解き明かすために、『幸せの黄色いハンカチ 想い出ひろば』に張り出されている説明文を転載しておく。
『町工場につとめる若者が買えるスポーツタイプ、4ドアの車という条件から、映画には出たばかりのファミリアAP・5ドアが選ばれた。排気量は1300cc、価格は67万円から80万円だった。また、車体の赤色は武田鉄矢演じる若者の派手好きでミエっぱりの性格を意識して選ばれている。』
ということのようだ。実は映画をしっかりと見るとわかるのだが、欽也の部屋には赤いカウンタックのポスターが張っている。ミエっぱりというのは、カウンタックが欲しいけどその代わりにファミリアということかな、と筆者は思っている。
撮影には2台のファミリアが使われ、撮影後は『幸せの黄色いハンカチ 想い出ひろば』に一台が寄贈され、もう一台はスタッフの一人に払い下げられたという。
映画やドラマの世界に日本車が登場して話題になったケースはたくさんあり、赤いファミリアもその一台だ。
『幸せの黄色いハンカチ』での赤いファミリアがあまりにも有名だが、『地震列島』(1980年・東宝・大森健次郎監督)でも使われている。こちらは東洋工業(なぜかクレジットはMAZDAだった)が協賛していたため、ボンゴ、ルーチェなどとともに登場している。
それから筆者が個人的に忘れられないのがTC CM。CMキャラクターは秋川リサさんで、CMソングはトランザムが手掛けた。ほのぼのした音楽が流れるなか、美女が登場する、というありがちな映像ではあるのだが、子ども心に秋川リサさんの美しさにドキドキしたものだ。