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初夏は三陸沖の鰹に、シンコの季節

さて、6月から7月にかけては東日本大震災で大きな被害を受けた宮城の気仙沼港に脂の乗った鰹(カツオ)がたくさん上がります。鰹は、春先に土佐であがる初鰹からはじまり、太平洋沿岸を北上していって、この時期に三陸沖にたどり着きます。

身を炙ってニンニクと合わせ、ポン酢醤油でいただく土佐造り。腹側に虫がいたので、藁で巻いて焼き、そのカスを叩いて落としたことから「鰹のタタキ」と呼ばれるようになったとか。

「目に青葉 山不如帰(やまほととぎす) 初鰹」なんて句があるくらいで、江戸の昔、夏の到来を告げる初鰹はたいそうな人気だったそうです。そもそも初物食いを競うのが江戸っ子の見栄というもの。誰よりも早く旬のものを食べ、「初物の味はやっぱり違うよねえ」と通ぶるわけです。

江戸前では、旧暦の4月頃、相模湾から房総沖に北上してきたものを初鰹と言ったようです。料理屋では1匹1両、今の10万円もしたというのですから驚きで、「初物を食うと75日長生きする」と言われました。

古くは「鰹=勝男」ということで縁起のいい魚とされ、戦国時代には出陣のときに武将へ進物として贈られたとか。そういえば、鰹節も「勝男武士」ですね。ただ、私自身の好みを言わせていただくと、青臭い初鰹より、脂ののった戻り鰹のほうが好きですね。

前号でも触れましたが、当時の鰹はたいへんな高級魚でした。寿司ネタにするような魚ではなく、きちんとしたお店で刺身を和辛子で食べるものだったとか。いつの頃からか生姜醤油を使うようになりましたのは、生姜が持つ解毒作用のほか、上品なイメージが高級魚「鰹」にピッタリだったのでしょう。

鯵(アジ)なんかも初夏が美味しいですが、冬の生まれたばかりの小鯵(ジンタ)の身のやわらかさも捨てがたくて、フライにしたら最高です。まあ、鯵は四季折々、使い方を工夫すれば、1年中美味しくいただける魚ですね。

それから、シャコは4月から7月にかけての子持ちのものが旨いですね。

夏の初めの旬を言えば、なんといってもシンコ(新子)。いわゆる出世魚で、5〜6センチほどの大きさからはじまり、シンコ、コハダ、ナカズミ、コノシロと呼び名を変えていきます。初物好きの江戸っ子の見栄はここでも存分に発揮されます。昨年は初物のシンコがキロ9万円という高値で取引されて話題になりました。一貫3000円――とても庶民には手の出ない世界です。このシンコも、コハダになるとキロ2000円になります。コノシロともなればひと山数百円で、寿司ネタにする板前はいません。ちなみにですが、コノシロの語源は「飯(コ)」と「代(シロ)」から来ているそうで、「飯の代わりになるほどたくさん獲れた」ことからその名が付いたということです。独特の臭みはありますが、脂が乗っていて私は好きなんですがね。

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おとなの週末Web編集部 今井
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