昭和な渋谷を満喫!『のんべい横丁』
昭和26年、屋台営業の飲食店が集められたのが始まり。今もレトロな横丁は健在。代替わりしながらも現在39軒が営業している。
令和の渋谷で見つけたあったかい「昭和の店」
待ち合わせ場所を間違え、友だちに会えなかった、あの日。携帯電話なんてない時代。朝まで飲んで〆のラーメンを食べた店はまだあるか。渋谷の街を歩いてみれば「昭和」の思い出が次々に蘇る。大変貌してしまった渋谷。けれど――まだまだあったんです、「昭和の渋谷」が。
白い上品な椅子カバー、使い込まれた木のテーブル。『名曲喫茶ライオン』は、泣きたくなるくらい「昭和」だった。カフェオレではなく、「ミルクコーヒー」を注文。クラシック音楽に心安らぐ。令和の渋谷に、こんなにも贅沢な空間があるのだ。
『たるや』は、90年以上続くお好み焼き屋さん。いい感じに燻された座敷で飲んでいると、注文していない焼肉がひと皿届く。聞けば、無料サービスとのこと。「80周年記念で始めたんですけどやめられなくて。11年間続けてます」と店の娘さんが笑う。「昭和」の店は客にやさしい。
宮下公園が「MIYASHITA PARK」になっても、お隣「のんべい横丁」は昔のまんまだ。ああ、呑兵衛心を誘う赤ちょうちん。まずは『会津』で、郷土料理と地酒「栄川」を一杯。次に『沙門』をのぞくと、「もう閉めようと思ってたけど、いいわよ」とキップのよいママさん。こんな感じもいいんだなあ。恐縮しつつも早々に飲み干し、ビールお代わり!
道玄坂を歩いているとビルの狭間にポツンと一軒家を発見。『板前料理 味宏』と看板があった。縄暖簾をくぐれば、かっぽう着姿の女将が出迎えてくれる。まるで昭和にタイムスリップ。いかん、泣いてしまいそう。
カウンターに並ぶのは肉豆腐、ぶり大根など日替わりの煮物三品。「私たちは三種の神器と呼んでるんだよ」と、おなじみさん。「女将はね、丁寧すぎるくらい丁寧に料理を作るんだ」と話す。その一品、冬の人気メニュー「ぶり大根」は芯まで味が染みながら煮崩れていない大根、ふわっと柔らかいブリの身がたまらない。美味しいなあ。
先ほどのおなじみさんは、なんと40年以上通っているという。「ボクはまだ10年、ここでは新参者です」と別のおなじみさん。みなさんの「味宏愛」がじわっとくる。いつまでも、渋谷にあってほしい一軒です。
撮影/西崎進也(板前料理 味宏、会津、沙門)、鵜澤昭彦(たるや、ライオン)、取材/本郷明美
※2022年2月号発売時点の情報です。
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