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朝昼に48皿を平らげてもまだ……

16世紀のイタリアで、運河の通行権を持っているおかげで金持ちだったカリロス伯の大食はつとに有名だった。その食欲のすさまじさに畏敬の念を抱いた子孫は、城の壁にカリロス伯の食事風景をレリーフ(浮き彫り)にして残したほどだった。

伯の朝食は10個のラルデ(ミルクと卵とベーコンを固め合わせてバターで揚げたもの)と3リットルの牛乳ではじまり、魚と肉の料理が16皿並べられ、たちまちペロリと片づけられた。

昼は毎日魚料理が中心で、鯛の焙り焼き、大ひらめのソース添えが各5匹、ほかに鯉、かます、舌平目、鮭、鰻などの海水、淡水魚が32皿用意され、それらもすっかり平らげた。しかも「夜が待ち切れなかった」というから、どんな胃袋をしていたのか仰天するばかりだが、そして晩餐は肉料理が中心だった。

野うさぎの背肉のぶどう酒煮、仔牛、羊、去勢鶏、きじ科のしゃこ、七面鳥などの丸焼き、野禽(野鳥)のアスピック、うずらのア・ラ・オルリー風など、肉類ばかり45皿、それに4皿のスープ、7皿のデザートが加えられた。ためしに電卓でこのカリロス伯が1日に何枚の皿をきれいにしていったか計算してみると、10個のラルデと3リットルの牛乳は別にして、朝昼晩の皿の合計がなんと104枚!

(本文は、昭和58年4月12日刊『美食・大食家びっくり事典』からの抜粋です)

『美食・大食家びっくり事典』夏坂健(講談社)

夏坂健

1934年、横浜市生まれ。2000年1月19日逝去。共同通信記者、月刊ペン編集長を経て、作家活動に入る。食、ゴルフのエッセイ、ノンフィクション、翻訳に多くの名著を残した。その百科事典的ウンチクの広さと深さは通信社の特派員時代に培われたもの。著書に、『ゴルファーを笑え!』『地球ゴルフ倶楽部』『ゴルフを以って人を観ん』『ゴルフの神様』『ゴルフの処方箋』『美食・大食家びっくり事典』など多数。

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おとなの週末Web編集部 今井
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