FCVの研究
ユーザーから人気の高かったエクストレイルだったが、日産にとっても重要なモデルとなった。そのひとつが、燃料電池車のベースとなったこと。燃料電池スタック、水素タンクなどを搭載するにはスペースが必要ということで各メーカーともSUVで研究を進めるのが常套手段だが、日産は初代英クストレイルで研究開発を進め、実証実験などを含め、エクストレイルFCVのハイヤーが実際に稼働していた。しかし、現在日産は燃料電池車の開発から手を引いている。技術力はあるのに継続性のなさがもったいない。
日産復活のカギ
初代エクストレイルは日産が本気で若者を取り込もうと努力し、見事若者を獲得した好例だ。今振り返ってみても、やることはしっかりやっていて抜かりがない。中途半端感がないのがいい。
一方の販売面。販売会社は売れるクルマを切望する。そんな販社にとって待望のモデルとなったのが初代エクストレイルだった。売れるクルマはセールスパワーが集中してさらに売れる。初代エクストレイルは販売面において好循環となった。
そう、メーカー、販社、ユーザーのすべてが幸せになれたのが初代エクストレイルだ。
さて、今の日産車、ここまで割り切ったモデルがあるだろうか? 残念ながらすでに2025年夏での生産終了が確定的となっているGT-R(R35)くらいだろう。
日産復活のカギを握るのは、初代エクストレイルのクルマ作り、マーケティング手法なのかもしれない。
【初代日産エクストレイルX主要諸元】
全長4445×全幅1765×全高1675m
ホイールベース:2625mm
車両重量:1340kg
エンジン:1998cc、直DOHC
最高出力:150ps/6000rpm
最大トルク:20.4kgm/4000rpm
価格:205万円(FF・4AT)
【豆知識】
2024年12月23日に日産自動車と本田技研工業は、連名で両社の経営統合に向けた協議・検討を開始することに合意し、共同持ち株会社設立による経営統合に向けた検討に関する基本合意書を締結したと発表。日本の2位、3位メーカーの経営統合の動きは世界中にセンセーショナルを巻き起こしている。現在日産の傘下にある三菱自動車は2025年から協議に加わるという。3メーカーの統合が実現すれば、販売台数は約850万台(2023年実績)レベルとなり、トヨタグループ、VWグループに次ぐ第3位となると見られているが、統合までの障壁は大きく、懐疑的に見る専門家もいるため慎重に見ていく必要がある。
市原信幸
1966年、広島県生まれのかに座。この世代の例にもれず小学生の時に池沢早人師(旧ペンネームは池沢さとし)先生の漫画『サーキットの狼』(『週刊少年ジャンプ』に1975~1979年連載)に端を発するスーパーカーブームを経験。ブームが去った後もクルマ濃度は薄まるどころか増すばかり。大学入学時に上京し、新卒で三推社(現講談社ビーシー)に入社。以後、30年近く『ベストカー』の編集に携わる。
写真/NISSAN、TOYOTA、ベストカー