新コンセプトのロータリースポーツ
リーチ常務が高く評価したRX-01だったが、スポーツカー受難時代、ロータリーは極度の販売不振ということもあり、市販化されることはなかった。
そのRX-01に代わり開発が立ち上がったのがRX-8だった。新世代のロータリースポーツは、「ファミリーでも使えるスポーツカー」という新コンセプトを掲げた。
そのコンセプトのもとに作られたのがコンセプトカーのRX-EVOLV(エボルブ)で、東京モーターショー1999で世界初公開された。写真からわかるとおり、これがRX-8となるのだ。観音開きドアを備えた4ドア4シータースポーツというこれまでにないジャンル。
RX-EVOLVもRX-8もデザインを担当したのは前田育男氏で、RX-8デビュー時に、「エボルブのままではスポーツカーにはできなかった」と語った。
エボルブでは後席の快適性を追求したあまりキャビンが大きすぎたようなのだ。ぱっと見では同じように見えるがキャビン容積、パッケージングはRX-8で刷新されている。人馬一体の走りにこだわるマツダとしてはその点は譲れなかったようだ。
新開発ロータリーエンジン搭載
RX-8はエボルブの公開から約3年半後の2003年5月に正式発表された。コンセプトのとおり観音開きドアを備えた4ドアスポーツ。エボルブよりもさらに肉感的な処理が施された前後の盛り上がったフェンダー、精悍なフロントマスクなどコンセプトだけでなく、何にも似ていないデザインは唯一無二のもの。
そして注目は新開発のロータリーエンジンだ。マツダのロータリーエンジンは、10A、12A、13Bとも吸排気ポートをペリフェラル(外周方向)に設置していたが、RX-8に搭載された13B-MSPエンジン(通称RENESIS:レネシス)は、サイドに設けているのが特徴で、高出力と低燃費を両立。通称のレネシスという響きもいい。ただし、エボルブの時には開発目標として280psを掲げていたが250psで登場。初代RX-7以来のロータリーターボではなくNA(自然吸気)ということを考えると250psは立派だ。ただ、市販モデルをパワー測定してみたら220psしかなかった、などの報告も。実際アメリカではパワーがカタログ値と乖離している、と問題にもなったがそれも克服。
評価が大きく分かれた
RX-8はマツダのロータリースポーツとして歓迎されたが、実際に市販されてみると評価は2分された。カッコいい個性的なデザイン、後席が使えるスポーツカー、ハンドリングのよさ、ロータリーエンジンの回転フィールの気持ちよさといった点の評価は高かった。
しかし、RX-8をRX-7の後継モデルと考えている人にとってはFDに比べてパワーがない、重い、遅い点を不満に思っていた。
RX-8はFDとは違うベクトルのクルマで、ロータリーエンジンを搭載しているがFDの後継車ではない。そんなことは百も承知でも、ロータリースポーツやRX-7に思い入れのある人がFDと比べてしまうのは致し方ない。