そこで先人は考えたのでしょう。東京・神田に本店のある老舗の鰻屋KKには、そんな食べる側の心理をついた人気メニューがあるのです。その名も「キャベジン」。胃腸薬ではなく、キャベツの浅漬けです。
じつは、キャベツときゅうりの浅漬けなのですが、キャベツ率は90%ほど。ほぼキャベツの浅漬けと言って間違いないでしょう。こいつがたまらなくうまい。正確にいうと、刻んだ大葉も入っていますし、付け合わせに真っ赤な茎わかめも添えられています。梅酢味です。
こんなキャベツの浅漬けをつつきながらながら、ビールとともに鰻を待つ時間は至福のひととき。「キャベジン」はかくも偉大な鰻屋の一品であり、オイラの条件反射行動である「キャベツ→鰻」に結びついていたということです。
この「キャベジン」、老舗KKの都内にある支店(日比谷、上野毛)でも提供されていて、値段こそ異なるのですが、お味は一緒。じつに完成度の高い鰻屋の一品なのです。それゆえ、夏も春も安定の味わい。おそらくは、通年出回るキャベツで作っているのではないでしょうか。
「こいつをやわらかな春キャベツで作ったら、さぞうまいのでは……」
と、ジジイに妄想が芽生えたのは、10年ほど前です。ちなみにキャベツは1年中ありますが、通年で出回る夏キャベツと、春に出回る春キャベツ(新キャベツともいう)とでは、実際、種類も産地も異なるのだそう。
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文・写真/沢田 浩
さわだ・ひろし。書籍編集者。1955年、福岡県に生まれる。学習院大学卒業後、1979年に主婦と生活社入社。「週刊女性」時代の十数年間は、皇室担当として従事し、皇太子妃候補としての小和田雅子さんの存在をスクープ。1999年より、セブン&アイ出版に転じ、生活情報誌「saita」編集長を経て、書籍編集者に。2018年2月、常務執行役員パブリッシング事業部長を最後に退社